2016年4月19日火曜日

<25 plus 9>薬はなぜこんなに高い がん治療剤「オプジーボ100mg」1瓶 73万円

◇超高価薬 中医協でも議論に~「イノベーションの衝撃」!


  高価薬が中医協で大きな議論となっています。国民医療費が13年に40兆円を超えたことを政府が大きく公表しました。その増加する医療費のうち薬剤費の割合が30%に迫ろうとしています。

  このことを背景に、昨年12月に肺がんへの効果が加わった「オプジーボ」について、今月の財務省の審議会で「肺がん患者約5万人に1年間使うと、医療費が最大1兆7500億円増える」という試算が公表されました。当然ながら中医協でもこのことが議論となり、医師ら診療側委員は「衝撃的な数字だ」と驚きを隠しませんでした。



  この時の中医協では、高脂血症の注射薬「レパーサ」の保険適用を承認しました。注射1回分で2万2948円です。昨年にはC型肝炎の新薬「ソバルディ」「ハーボニー」が発売され、保険適用時の価格はそれぞれ1錠約6万円と約8万円。健康保険組合など支払い側委員は「昨秋以降の調剤費は異様な伸びだ。C型肝炎薬が影響している」と指摘しました(共同通信2016/04/14)。

  国民医療費の膨張は、これまでも高齢化を背景にした増加がとくに強調されていましたが、医療費を直接押し上げているのは高価薬と高度な医療機器であることは指摘されていました。つまり、アベ政治の好きな「イノベーション(技術革新)」の「経済成長」です。製薬会社や医療機器製造会社のそれです。アベ政治では医療産業を成長産業として位置づけ、一方で患者の願いを逆手にとりながら、「保険医療制度の維持のために」一つの医療行為で自由料金と保険診療を認める「混合診療」を推進しています。

  しかし、混合診療は政治課題も多く、批判も多いために簡単にはいきませんので、製薬会社などの利益を優先させ薬価収載に踏み切っているように思われます。

  このような薬剤で効果が同じような薬剤ががない場合の価格は、材料や開発コストなどの原価の他に人件費や利益を上乗せして決められるようですので、利益の上乗せを考えれば「乗せ放題」は否定できません。

  ところが最近に多い薬剤の高額化、あまりにも高額のために、厚労省幹部の一人は、「イノベーション(技術革新)の衝撃」と表現したそうです。これでは「公的医療保険制度」の医療費削減の軟着陸は不可能となり、それでやっと「高価薬」が政府の諮問機関でも議論になったということでしょう。

  患者にとっては、高額治療薬の保険適用や「高額療養費制度」は最終的負担金は1~3割になりますから、願ってもない制度には違いありませんが(それでも支払い能力のある一部の人たちですが)、こうしたことが進行すれば受診格差=差別診療は拡大するとともに公的医療保険制度の維持は困難になります。

 したがって、無差別平等の公的保険医療制度の確立を前提に、安全が確保された治療薬の保険適用は当然ですが、高価薬の民主的規制も当然だと思います。世のため人のためのイノベーションは「ノーベル賞もの」です。もう一つは経済格差是正、99%の人々のための税制と産業構造の転換こそが求められていると思います。

 そして、「日本の薬は安い」という常識は覆され、外資系企業がこうした動きに着目し、日本市場への参入を狙っています。また、注意しなければならないのが国会審議が始まったTPPです。TPPはこうしていっそう差別医療を拡大と公的医療保険の解体を進めて行くに違いありません。

 この超高価薬「オプジーポ」、皮膚がん(悪性黒色腫)に加え「肺がん」に保険適用になり・・・・・「免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)」の治療が始まっています。

 これに対し、「日本肺がん学会」は昨年12月18日、使用上の注意について患者宛に「オプジーボについてのお願い文書」を発表しています。

  →「抗PD-1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)についてのお願い」

  私は技術者ではありませんので、とくに気になることはアベノミクスとの関係での経済的な問題です。もちろん、肺がん治療薬「アレッサ」問題もありますので、TPPによって外資企業の「安全が保障されていない」医薬品が大量に出回るリスクに、無頓着ではいられません。

(以下、参考・引用資料)

▷(核心評論)技術革新が保険財政脅かす 費用対効果の評価は不可避 超高額薬剤


(その他)  2016年4月15日 (金) 配信:共同通信社(出所:m3.com)

  「イノベーション(技術革新)の衝撃」と、厚生労働省幹部の一人は表現した。治療効果が高い半面、価格も極めて高い薬剤が増えている。患者には福音だが、医療保険財政を脅かす存在になりつつある。

  代表格は日本発の新薬「オプジーボ」だろう。免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる新しいタイプの抗がん剤で、2014年に皮膚がん(悪性黒色腫)、昨年には肺がんに保険適用となった。全ての患者に効くわけではないが、効き目のある人には延命効果が著しいと報告されている。今後、他の種類のがんにも保険適用が広がりそうだとの観測もある。

  問題はその価格だ。100ミリグラム1瓶で約73万円。患者1人の治療にかかる医療費は年3500万円に上る。国民皆保険の日本には高額療養費制度があるため、患者の自己負担は月8万円強(標準的な所得の場合)で済む。とはいえ残る費用は保険財政で賄うのだから、保険料や税金の形で国民全体の負担に跳ね返る。

  同様の図式は、昨年登場した米国製のC型肝炎治療薬「ソバルディ」「ハーボニー」にも言える。高い治癒率で知られるが医療費は12週間服用で400万円程度かかる。

  13年度に40兆円を超えた国民医療費のうち、薬剤費が占める比率は近年20%強で推移。国民1人当たりの薬剤費は、既に米国やドイツに次ぐ高い水準だ。イノベーションがもたらす恩恵は歓迎すべきだが、負の影響が大きすぎて財政がパンクしては元も子もない。

  厚労省は本年度から薬価の決定に「費用対効果」の考え方を試行的に導入する。支払ったお金に見合うだけの治療効果があったかどうかを評価し、割高だと判断されれば薬価を下げる仕組みだ。

  実際の薬価見直しに使うのは18年度以降だが、厚労省は今月中にも見直し候補となる薬剤を数種類選んでメーカーにデータ提出を求め、費用対効果の分析を始める。前述したオプジーボ、ソバルディ、ハーボニーや、乳がん治療薬「カドサイラ」などが分析対象として"当確"のようだ。

  新薬メーカーの開発意欲をそいではいけないが、少子高齢化を受け安泰とは言い難い保険財政を考えれば、費用対効果を反映した薬価決定は不可避だろう。英国をはじめ欧州やオセアニア、アジア各国も導入している。

  その際に気を付けたいのは、患者の視点をないがしろにしないことだ。がん患者の集まりで「抗がん剤が高すぎると批判されるが、私たちは無駄遣いをしているのではない」という訴えを聞いたことがある。

  どんなに高額の薬剤であっても必要とする人はいる。患者が後ろめたさを感じながら治療に臨むような社会はどこかおかしい。患者の利益を守りつつ、保険財政と新薬開発コストとのバランスをどう取るか。国民的な議論が急務となる。

 (共同通信編集委員 内田泰)

2016年4月18日月曜日

<25 plus 9>(茨城)鬼怒川堤防決壊による浸水地域の脳卒中が水害直後4倍に 災害時ストレス

◇鬼怒川堤防決壊で浸水地域の脳卒中が4倍に増えた

 災害時のストレスが血圧の急激な上昇などが誘因で脳卒中を引き起こすことは指摘されていますが、常総市の鬼怒川堤防の決壊によっても被災者に重大な影響を及したことがあきらかになりました。今回の熊本大地震でも救急医療・保健体制の整備が前提ではありますが、被災直後のケアを重視してもらいらいものです。

常総市、鬼怒川堤防決壊 Yahoo!ニュース
Yahoo!ニュース

 Yahoo!ニュース常総市・鬼怒川堤防決壊→

(以下、参考・引用資料、毎日新聞)

◇茨城・常総の浸水地域の脳卒中、水害直後4倍に 民間病院調査、精神ストレス影響か

(地域)  2016年4月14日 (木) 配信:毎日新聞社(出所:m3.com) https://www.m3.com/news/general/416227

 脳卒中:茨城・常総の浸水地域、水害直後4倍に 民間病院調査、精神ストレス影響か

 昨年9月の関東・東北豪雨で、鬼怒川の堤防が決壊し浸水被害を受けた茨城県常総市の地域で、被災後の1カ月間に脳卒中で入院した患者数が前年のほぼ同時期と比べ約4倍に増えていたとの調査結果を、筑波メディカルセンター病院(同県つくば市)などのチームがまとめた。札幌市で開かれる日本脳卒中学会で14日に発表する。一般に、災害時のストレスが血圧の急激な上昇などを引き起こし、脳卒中の誘因となると考えられている。東日本大震災直後の宮城県で、脳卒中の救急搬送が増えたとの報告もある。

 チームが、茨城県常総市の堤防決壊で浸水した地域約40平方キロを調べたところ、決壊した翌日の昨年9月11日からの4週間で、脳卒中で入院した患者が11人いた。前年の9月はこの地域から3人しか出ておらず、脳卒中患者が約4倍に増えたことになる。チームによると、どの脳卒中患者にも水害に伴う外傷はなかった。堤防決壊から1カ月後、脳卒中患者は平年並みの数人程度に戻った。一方、浸水被害のなかった周辺地域では患者数に変化は見られなかった。

 調査した渡辺憲幸医師(脳神経外科)は「被災直後の精神的ストレスが脳卒中を引き起こす危険要因になり得ることが裏付けられた。後片付けなどの心労の影響も推測されるため、被災直後は特に被災者への手厚いケアが必要だ」と指摘する。

【五十嵐和大】

2016年4月12日火曜日

<25 plus 9>三島総合病院の場合 医師確保問題で二次周産期センターの運用できず

◇三島総合病院の場合 医師確保問題で二次周産期医療機関の運用できず


これはずいぶん取り糺された問題で、すでに手垢のついた情報だそうですが・・・・・・・・・・・、

 地域医療機能推進機構・三島総合病院(旧三島社会保険病院)が、昨年10月開設の予定で12億4千万円(県・市の補助金3億5200万円)を投じた「周産期センター」(3階建て2700m2 24床、産科医3人・小児科医2人の24時間体制=予定)が医師確保ができず暗礁に乗り上げています。

 先月28日にオープンしたものの産科医一人のみが確保されただけで、分娩には非常勤医師を含めた体制で24時間対応できるようにしたようですが、小児科医師は一人も確保できなかったためNICU(3床)の診療体制は不可能となり、「二次周産期医療機関」としての運用はできていません。

 この三島総合病院の場合は、この地域の二次周産期医療体制の拡充が急務となっている下で、産婦人科・小児科医師の確保が困難であるという根底にある医師事情をよく吟味しないまま、無理な計画で突破しようとしたことにありそうです。

 もともと「産科医3人、小児科医2人の5人の常勤医体制」で運用する予定だったのですが、この話を聞いたとある小児科医は「産科、小児科それぞれ5人で10人で運用するのかと思った」とその無理な計画に疑問をもったといいます。

 地域の切実な要求に応えることはよしとしても、利権の絡む資本の要求やら、公的補助金などに惑わされたということもないとは言えません。

 
三島総合病院(静岡新聞01/15)
(以下、参考引用資料)

▷三島総合病院:周産期センター開設 常勤医1人だけ 2次めど立たず /静岡

(地域)2016年3月30日(水) 配信:毎日新聞社(出所:m3.com)

 医師が確保できず昨年10月の開設予定が延期されていた三島総合病院(旧三島社会保険病院、三島市谷田)の周産期センターが28日オープンした。ただし、確保できた常勤医は産科医1人だけ。異常分娩(ぶんべん)にも対応でき比較的高度な医療を施す「2次周産期医療機関」としての運用のめどは依然立っていない。

 センターは3階建てで延べ約2700平方メートル。当初計画では、24床を設置し、産科医3人、小児科医2人の計5人の常勤医を確保する予定だった。分娩には非常勤産科医を加えて24時間態勢で対応するが、小児科医は非常勤医も含め1人も確保できず、新生児集中治療室(NICU)に準じた診療体制を予定していた3床は整わなかった。

 同病院は「医学部の研修制度が変わり、医師が集まらなくなった」と説明。「今後も医師の確保に努め、2次医療機関への移行を目指す」としている。

 センターは、病院を運営する独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構(現・地域医療機能推進機構)に三島市と県が働きかけ、機構が2013年4月に計画を承認。事業費約12億4000万円のうち、県と三島市が補助金計3億5200万円を拠出した。

 日勤(午前8時半~午後5時半)と当直(午後5時半~翌午前8時半)の2交代で、医師1人を常に配置するとしている。【垂水友里香】

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 ■解説

 ◇逼迫した出産事情背景に


2次周産期医療機関として機能できないにもかかわらず、地域医療機能推進機構がセンターを開設したのは、来年度にずれると県と三島市から補助金計約3億5200万円の返還を求められる可能性もあったからだ。当初は医師確保や経営的観点からセンター建設に難色を示していた機構が、それでも県や三島市の要請に応じた背景には、逼迫(ひっぱく)した県東部の出産事情がある。

 三島市には出産できる産科医院が2カ所しかなく、同市を含む「駿東田方医療圏」にある2次以上の周産期医療機関も、沼津市立病院と、順天堂大静岡病院の2カ所だけだ。

 さらに新生児集中治療室(NICU)の病床整備率を国は出生1万人当たり25~30床と定めるが、県東部に限ると12・4床しかない。県西部には聖隷浜松病院、浜松医科大病院などNICUを備えた病院が5カ所あるが、県東部は順天堂大静岡病院だけだからだ。

 県周産期医療体制整備計画では「駿東田方医療圏は2次機関が少なく、ハイリスク患者が高度医療を担う3次機関に集中している。2次の拡充とNICUの機能強化が課題だ」としている。

 田中産婦人科(三島市中央町)の田中平生院長(79)は「急患を受け入れる沼津市立病院と順天堂静岡病院には患者が集中している。私たち医師が赤ちゃんを安心して取り上げるためにも2次医療機関整備は必要だ」と話す。一方で「24時間態勢なら、最低でも産科医は8人が必要だ。産科3人では激務で、この条件で医師が集まらないのは当然だ」と指摘する医師もいる。

 地域で求められている2次医療機関でも機能しなければ意味がない。出産を控えた女性が安心して産み育てられる環境を、しっかりとした計画の元に進めてほしいと切に願う。

【垂水友里香】

2016年4月8日金曜日

<25 plus 9>遠軽厚生病院 産科医不在のまま半年 救急搬送は北見の病院へ 

◇オフォーツクの地、北海道遠軽地区、地域センター病院が産婦人科医確保の見通し立たず

 北海道遠軽地区のJA北海道厚生連・遠軽厚生病院(337床)の産婦人科で昨年10月1日から医師不在のまま半年が経過し、妊婦の救急医療も危機的な状況になっています。医師の確保も見通しが立っていません。

  10月から今年3月mでの期間に、「妊婦の救急搬送は遠軽町で3件、佐呂間町で1件発生した。遠軽の3件はいずれも遠軽厚生病院で妊婦健診を受けていた妊婦が、切迫早産で北見市内の病院へ転送された。佐呂間では破水したため妊婦の自宅から北見市内の病院へ搬送」(北海道新聞)されました。


遠軽厚生病院HPより
(以下、参考引用資料)遠軽厚生病院産婦人科ページへ→ 遠軽厚生病院産婦人科

■北見へ妊婦救急搬送4件 医師不在半年、確保のめど立たず 通院負担重く
(地域) 2016年4月7日 (木) 配信:北海道新聞(出所:m3.com)https://www.m3.com/news/general/414739

 【遠軽、湧別、佐呂間】遠軽厚生病院の産婦人科常勤医が昨年10月に不在になってから、半年が経過した。遠軽地区(遠軽、湧別、佐呂間の3町)の出生数に大きな影響は出ていないが、妊婦の大半は北見市内の医療機関で出産し、これまでほとんどなかった妊婦の北見への救急搬送も4件発生した。出産前後に何度も北見に通院する大変さや、冬期間の車での移動に不安を訴える声が相次いでいる。

 常勤医が不在となってから今年3月までに出生が届けられたのは遠軽町69人、湧別町30人、佐呂間町12人。3町によると、この半年間の出生数は、それぞれ前年までと大きな差はない。遠軽厚生病院の産婦人科医の引き揚げは昨年5月ごろに判明したため、「出産をためらうなどの影響が出てくるのであれば、これからではないか」(遠軽町)との見方もある。

 出産した場所の内訳を見ると、遠軽町69人のうち、北見市が53人、旭川市が6人、札幌市が4人と続く。湧別町では北見市23人、札幌市2人、旭川市2人の順で、佐呂間町は北見市11人、道外1人だった。

 大半は北見で出産しているが、北見市までの車での所要時間は遠軽から約1時間10分、湧別からは約1時間半、最も近い佐呂間からでも約45分かかる。昨年11月に北見市で2人目の子供を出産した遠軽町内の30代女性は「出産前は夫が仕事を休んで車を運転して7回ぐらい北見に通った」と話し、「産後も北見の病院に通わなければならず、大雪の日もあって大変だった」と振り返る。

 遠軽地区広域組合消防本部によると、同期間に妊婦の救急搬送は遠軽町で3件、佐呂間町で1件発生した。遠軽の3件はいずれも遠軽厚生病院で妊婦健診を受けていた妊婦が、切迫早産で北見市内の病院へ転送された。佐呂間では破水したため妊婦の自宅から北見市内の病院へ搬送した。いずれも大事には至らなかったが、遠軽の3件については「常勤医がいた時なら搬送しないで対応できた」(遠軽厚生病院)ケースという。

 遠軽町は引き続き全国の医療機関に向け産婦人科常勤医の募集を行っているが、「現時点で見通しは立っていない」という。一方、北見赤十字病院には医師などが同乗し出産にも対応できるドクターカーが配備されるが、周産期についての基本的な出動エリアは北見、置戸、訓子府、美幌、津別の1市4町で、遠軽地区3町は対象外だ。

 遠軽地区広域組合消防本部は「今後も妊婦に対する救急搬送の訓練を行い、関係機関との連携を密にしていきたい」と気を引き締めている。

▷遠軽厚生病院の地域地図→  JA北海道厚生連・遠軽厚生病院

2016年4月6日水曜日

・「元ナチ党員の思想と行動」-彼らは自由だと思っていた

 ◇激しさを増す自公陣営・アベ政治の反共キャンペーン

      ~東京新聞「こちら特報部」から


 アベ政治は22日、日本共産党を「現在においても破壊防止活動法(破防法)に基づく調査対象である」という答弁書を閣議決定した。東京新聞はこれについて「特報」で勇気ある女性記者が「過熱する反共」という記事を書いています。

 この背景には、共産党がすでに候補者を決めていた30の改選1人区のうち9選挙区で候補者を取り下げ、野党統一候補の一本化で合意し、さらに他選挙区でも協議が続くられているなどの「野党共闘」の進展があります。

 閣議決定は、あの鈴木貴子衆院議員(北海道比例ブロック、元民主党道連代表)の質問主意書に答えたものでした。氏は4月24日投開票予定の衆院北海道5区補選をめぐって、民主党が共産党と選挙協力することに反対し離党届を出しましたが「除籍」処分となり、自民党入りが噂になっています。その鈴木議員が共産党が「『国民連合政府構想凍結』をはじめ、変わったと主張する共産党への政府の見解を問うため」に質問したといいます。これは鈴木氏の自民党へのすり寄りで、明らかに迫る国政選挙を意識した連携プレイに違いないのです。「自民の歓心を買うための手土産のつもりだろう」と言うのは五野井郁夫・高千穂大准教授(政治学)です(東京新聞3月24日付朝刊)。

 さらに自民党は広報ビラで、「理念も政策もバラバラの数合わせ」、「究極の選挙談合」、「民共合作候補」、などとしながら旧ソ連のチェコ侵略まで持ち出して、「私たちが戦うのは"ひ弱な野党"ではない。相手はその裏で確実に勢力を拡大しつつある共産党」であると、ありようもない恐怖感をあおりながら、民主党(民進党)内部と民主支持層を揺さぶって、野党共闘の分断を画策するのです。

 中野晃一・上智大教授(政治学)は、「共産党を最初に狙い撃ちしたナチス政権とますます似てきた」、「政治への嫌悪感が強まり、野党が分断されれば議席は維持できるという発想で、何となく怖いという印象操作をしている」とその危険性を指摘しています(前掲、同紙)。

◇反共は不自由のはじまり~「発端に抵抗せよ」と「将来を考慮せよ」~



 この東京新聞記事は、あまりにも有名なマルティン・ニーメラー牧師(1892~1984)の言葉の引用とともに、SNSなどで数多く投稿されています。このニーメラー牧師の言葉は、これまでも露骨な反共主義が、いやそうでなくとも、反共思想が頭をもたげてくるたびに、引用されています。

 プロテスタント・ルター派のニーメラー牧師の言葉というのは、国内外で大学教授の経験をもつ米国の記者ミルトン・マイヤーの著書「they thought they were free」(「彼らは自由だと思っていた――元ナチ党員10人の思想と行動」(田中浩・金井和子訳、未来社)〉の中に出てきます。それはこの本の中で、教授仲間だった言語学者が語っているのを引用したものです。

 というのもM・マイヤーは、外国との文化や人との交流をほとんどもっていなかったドイツの一小都市(戦前の日本も事情は同じだった=翻訳者)クローネンベルグに、戦後すぐ一年以上にわたって滞在し、生活しながらナチズム運動に実際に加わった旧ナチ党員である10人の小市民たちの証言や告白など対話を通じて、その思想や行動の実態を追究するというものでナチス研究の中では珍しく、そのためにたいへん真実味が伝わる著作になっているとも言われています。

M・マイヤー(著書「彼らは自由だと思っていた」より)

  その頃というのは「クローネンベルグ住民たちが、『反ユダヤ主義』と『反社会主義』--日本では反米・英と『反社会主義』--という仮想敵をかかげ、その殲滅がドイツ民族の使命であり、同時にドイツ民族の繁栄を保証するものであるとするナチズムの思想に急速に同化されていった状況」におかれていました(田中浩、同著「あとがき」)。

 そこで著者の同僚の言語学者が語ります。「すべてが起こってしまってから、『発端に抵抗せよ』と『終末を考慮せよ』というあの有名な一対の格言を私は何度も考えてきました」。「ニーメラー牧師は、(ご自分についてはあまりにも謙虚に)何千何万という私のような人間を代弁して、こう語られました。ナチ党が共産主義を攻撃したとき、私は自分が多少不安だったが、共産主義者でなかったから何もしなかった。ついでナチ党は、社会主義者を攻撃した。私は前よりも不安だったが、社会主義者でなかったから何もしなかった。ついで学校が、新聞が、ユダヤ人等々が攻撃された。私はずっと不安だったが、まだ何もしなかった。ナチ党はついに教会を攻撃した。私は牧師だったから行動した---しかし、それは遅すぎた、と」。

◇「我々は自由と思っていた」と言う錯誤だけは繰り返してはならない

 
   言語学者の話を続けます。こうした「プロセスの中にいれば、それに気づくことは絶対にできません」。それらの段階、段階、「そのあいだに何百もの小さな段階があります。なかにはそれと感じられないものももあります。そしてどの段階も、つぎの段階でショックを受けないような準備をしているのです。第三段階は第二段階よりそんなに悪くないのです。あなたが第二段階で抵抗しなければ、なぜ第三段階で抵抗しなければならないのでしょうか。こうして、事態は第四段階に進みます。

  そしてある日・・・・・それはささいな事件をきっかけに、私の場合は赤児同然の私の息子が『ユダヤ人の豚野郎』といったことでしたが、突然音をたててくずれ、すべてが変貌したことに、目の前で完全に変貌してしまったことに、あなたは気づくのです」。

 マイヤーの教訓

    訳者の田中浩氏はあとがきでこう綴ります。「『無知は犯罪である』とヘーゲルは述べた。しかし、国民を無知の状態にしておくことはさらに犯罪的である。歴史上の政治はほとんどこのような方法によって大衆を操作してきた。マイヤーが対話した人びとは、ごくふつうの善意の人びとであった。しかし、彼らは、身の周りのことやドイツ以外のことはほとんど知らなかったし、また、それ以上に知らされることもなかった。『彼らは自由だと思っていた』というマイヤーの教訓は今日でもなお生きている。私たちは少なくとも『我々は自由と思っていた』という錯誤を再び繰り返すことだけは避けたいものである」。

  わが国の政治、今日のアベ政治にはこうしたレベルの国民の意見には耳を傾けることはほとんどありません。IS(テロ)などとともに中国、北朝鮮の脅威などと思想としての「社会主義(共産主義)」を「仮想敵」と設定しながら、国家安全保障会議(日本版NSC)の設置、特定秘密保護法、集団的自衛権行使の容認、歴史認識の変更、安全保障関連法=戦争法などなど歴史に逆行する法律を次々に放ち、嘘八百の国会運営で強行突破してきました。そして、日本共産党を「破壊防止活動法」の対象と確認する閣議決定です。
  
  ネット上では右翼たち(ネトウヨ)とその同調者が、「国家機密法なんかどこの国にもあるよ」、「安倍内閣がファシズムだって、どこが」、「アベがナチスと同じだって?どこが」などが飛び交う始末で場合によっては炎上することすら少なくありません。ヘイトスピーチも野放し状態です。

 彼らは自由だと思っている。しかし、「我々は自由と思っていた」という錯誤にだけは陥らないようにしなければなりません。

2016年4月2日土曜日

<25 plus 9>(新潟)看護師不足で療養病床開設見通しナシの延期 魚沼市立小出病院

 新潟県魚沼市立病院(一般病床90床)では、4月1日開設を予定していた療養病床44床は看護師不足で開設の見通しがなくなりました。

魚沼市立小出病院イメージホームページより
魚沼市立小出病院

▷小出病院 療養病床開設延期 看護師が不足
(地域)  2016年4月1日 (金)  配信:新潟日報(出所:m3.com)

 魚沼市立小出病院(同市日渡新田)が1日に予定していた療養病床(44床)の開設を、看護師が確保できず延期することが31日、同病院などへの取材で分かった。開設時期の見通しは立っていない。同病院は「早期開設に向けて、看護師確保に努めたい」としている。

 同病院によると31日現在、在籍している看護師は88人。4月1日付で3人が加わるが、療養病床開設にはあと10人ほど足りないという。改装した病棟を使い、1日に開設する予定だった。

 看護師確保に向けてはナースバンクに求人を要請したほか、今月下旬には市内全域に看護師の求人広告を出す。同病院は「患者に不便を掛けるが、他の医療機関と連携して病床不足に対応したい」と話す。

 魚沼地域では医師不足に対応するため、急性期の患者は魚沼基幹病院が受け持ち、一定程度回復した後は必要に応じて小出病院など地域の病院で療養するといった医療機関の機能分担が進められている。

<25 plus 9>(徳島)訪問看護ステーションの業務短縮 看護師不足

 看護師不足も未だに様々な問題を投げかけています。団塊世代がすべて後期高齢期に入る時期の医療費の膨張を防ぐための医療費削減をめざし、政府・厚労省は「地域包括ケアシステム」の構築を推進していますが、訪問診療を実施する医療機関や訪問看護ステーション、介護事業所の整備が十分に進行していません。
 一方では、人員不足による訪問看護ステーションや介護事業所の縮小もみられ、包括ケアシステムに影を落としています。規制緩和で流通、生保などの大資本が介護事業に参入してきていますが、営利会社などの民間企業にやらせ放題にするだけでなく行政の支援が裏付けにならなければことの進行はありません。


▷鳴門病院、24時間訪問を9時間に 看護師不足で短縮
(地域) 2016年4月1日 (金)  配信:徳島新聞 (出所:m3.com)

(写真)徳島県鳴門病院ホームページより
鳴門病院訪問看護ステーション 

 徳島県鳴門病院は4月から、自宅で療養生活を送る患者の訪問看護を24時間体制で行う「訪問看護ステーション」の業務を、午前8時半~午後5時15分までの約9時間に短縮する。利用者の希望を聞いた上で、土日祝日も対応する。24時間体制を改める理由について同病院は「人員不足で、安全な看護が提供できないため」としている。

 「訪問看護ステーション」は、看護師が自宅での療養を希望する患者宅を訪問し、症状を確認したり、相談に乗ったりしている。看護師1人で行うため、幅広い知識や経験が必要となる。

 これまで看護師4人で交代して行っていたが、年度末で1人が退職することになり、補充が間に合わず、業務時間を短縮せざるを得なくなった。現在、ステーションの人材を院内で養成しており、人材が確保でき次第、24時間体制を再開する。時期は未定。

 サービスを受けていた患者は約30人で、全員に市内外の24時間体制のステーションを紹介済みだという。

 同病院は「ご迷惑をお掛けするが、ご理解いただければ」としている。

2016年4月1日金曜日

・<25 plus 9>(愛知)今も医師問題。名古屋大病院では救急医がいっせい退職

 退職の理由はそれなりにいつもそろう。しかし、それだけでは問題の本質を追究することはできません。労働条件や職場環境、医療現場と病院の方針のミスマッチ。ほんとうはその背景が大切なのでしょう。


■救急医9人、一斉退職へ…名大病院、来月に調査委
 (大学) 2016年3月31日 (木) 配信:読売新聞(出所:m3.com)https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160331-OYTET50005/?catname=news-kaisetsu_news


名大病院ホームページより
名古屋大学医学部付属病院

 名古屋大病院(名古屋市昭和区)で救急科の医師21人のうち半数近い9人が3月末で一斉に退職することが、同病院への取材でわかった。名大病院は他の診療科の医師の応援を受けるなどして、救急患者の受け入れ体制を維持し、影響が出ないようにする。病院側は4月中に学外有識者を交えた調査委員会を設置、退職の経緯を調べて対策を検討する。

 名大病院によると、研修に来ていた他病院の医師が戻ったり、出身地に帰ったりするほか、1次・2次医療機関へ移る医師がいたため、退職が重なった。また、若手の一部から救急科の職場環境や救急医療の方針に対する不満などを指摘する声もあるという。

 救急科には4月に2人の医師が新たに加わる予定で、内科や外科などの医師も応援に入るという。名大病院は「救急患者の受け入れに影響がないようにする」としている。

 名古屋市消防局によると、2014年度の救急搬送件数は約10万4400件。名大病院は同年度、約4150件を受け入れた。

2016年3月22日火曜日

・<25 plus 9>(茨城)県西総合病院で常勤外科医がゼロに

私は<25 plus 9>。あまり議論にならなくなった医師問題や医療機関の今日的な動向について探ってみたいと思う。

 茨城県桜川市の県西総合病院で四月から外科医の常勤医が0「ゼロ」になることが発表された。現在は三人が救急医療を含め当病院の消化器系外科を一手に引き受けている。この地域医療への影響は避けられない。県西総合病院は筑西市民病院と再編統合され、2018年10月、新中核病院として開院する予定だ。


県西総合病院(桜川市)
→ 県西総合病院ホームページ

 朝日新聞によれば、三人の外科医は千葉大からの派遣で「引き上げ」を告げられたという。「引き上げ」の理由について新中核病院の理事長と院長に、筑波大と自治医大の教授が就くことが決まり、両大を中心に病院運営を進める方針となったことが理由のひとつではないかという(中原智子院長)。

 まるで、「引き上げた千葉大のせい」とも受け取れるが、それはあまりに単純すぎる。大学の引き上げが引き金になることはあるが、医師不足についてはこれまで議論されてきたことでもあり、その背景には低診療報酬と過酷な医師労働がある。今年四月からの診療報酬改定も診療報酬は引き下げられた。とくに病院には厳しくなっている。

 医師問題は終わっていない。「財政難」を理由にした社会保障費の削減が続く限りそれは終わらない。

(以下、参考・引用)

▷茨城)常勤外科医がゼロに 県西総合病院、4月以降

(地域) 2016年3月18日 (金) 配信:朝日新聞(出所:m3.com)http://digital.asahi.com/articles/ASJ3K2JTSJ3KUJHB001.html?_requesturl=articles%2FASJ3K2JTSJ3KUJHB001.html&rm=460

 桜川市の県西総合病院で4月以降、3人いる外科の常勤医がゼロになることがわかった。病院を運営する桜川、筑西両市の一部事務組合の議会で17日、中原智子院長が明らかにした。常勤内科医1人も退職するといい、入院患者の受け入れも制限される。地域医療に及ぼす影響は大きい。

 県西総合病院には12の診療科がある。許可病床数は299だが、医師不足などの影響で実稼働の病床数はそれを100以上下回る。最大30人以上いた常勤医は現在15人。うち内科は4人で、外科は3人だ。県西総合病院は筑西市民病院と再編統合され、2018年10月、新中核病院として開院することが決まっている。

 3人の常勤外科医は千葉大からの派遣だ。中原院長によると、昨年12月初め、千葉大の責任教授から連絡があり、3人の「撤退」を告げられたという。教授との面会を試みたが、会えなかったという。事務組合長の大塚秀喜・桜川市長も教授に「派遣継続」の要請を試みたが、面会はかなわず、1月下旬、3人の引き上げが正式決定した。同時期、消化器内科の常勤医の退職も決まったという。

 組合議員から「千葉大の引き上げ理由」をただされた。中原院長は、新中核病院の理事長と院長に、筑波大と自治医大の教授が就くことが決まり、両大を中心に病院運営を進める方針が示されたことも理由の一つではないかと示唆した。

 一方、外科と消化器内科の常勤医がいなくなることで病院経営は厳しくなる。外科手術ができず、入院が必要な消化器疾患の受け入れが不可能となるからだ。今年度に比べ、新年度の医業収益は3億円弱減ることが予想されるという。

 筑西広域消防本部によると、昨年の県西総合病院への救急搬送は579件で、桜川市内の救急搬送先として集中している。消防本部の幹部は「外科手術ができず、消化器疾患の受け入れが無理となれば搬送先の候補からはずさざるを得ない」と話す。市内の医療機関は少なく、真壁医師会によると、診療所は15で病院は3院。医師会幹部は「県西総合病院は地域医療の中心だっただけに、影響は大きい」と懸念する。

 中原院長は答弁の中で「新中核病院に移行するまでの2年半、安全・安心の医療を提供し、この地域の医療を守っていくことが県西総合病院の責務と考える」と述べ、関係機関などに理解と協力を求めた。(吉江宣幸)

2016年3月20日日曜日

・<25 plus 9>診療報酬引き下げ、社会保障の削減で、また四月から負担増

    私は<25 plus 9>。
    四月から診療報酬引き下げが実施され、医療費など社会保障費の国民負担が増える。「大病院」から患者を引き離す。病院の経営も大変だろうし、どちらも患者のためにはならない。病院は保険と自由料金の混合診療の導入を含む、認められる「自由料金」を増やさざるを得ないからだ。

 どの世論調査でも社会不安を反映し「社会保障政策」への要望は高い。しかも消費税は社会保障費に使うと言う嘘八百(だが麻生財務相などは「カネに色はついていない」とも・・・・・)。
 しかし、アベ政治ではその99%の所得層の要望を逆手に取り「財政難」「社会保制度の維持」といいながら、国の負担を減らし国民負担を増やしている。国の負担をまんべんなく減らすというならわかるが、大型「公共投資」、法人減税など大企業への助成は増やす方向だ。
...

(以下、参考・引用)

▷(経済)社会保障、来月から負担増 大病院 紹介状なしで追加費

東京新聞 2016年3月20日 朝刊:http://www.tokyo-np.co.jp/…/…/201603/CK2016032002000129.html

 四月から社会保障の負担が見直される。医療では紹介状なしでの大病院受診や保険料、入院時の食費などが軒並みアップし、国民年金保険料も上がる。家計にとっては重荷となりそうだ。
 医師の紹介状がないと窓口で追加負担を求められるのは、五百床以上などの大病院で、全国約二百四十カ所に上る。診察の費用以外に初診で五千円以上、再診で二千五百円以上が必要となる。


 大病院に患者が集中し、待ち時間が長いなどの問題が指摘されているため、軽症の人はまず診療所などで受診するよう促す。高度な医療を担う大病院と、身近なかかりつけ医との役割分担を進めるのが狙い。

 入院時の食費負担も一食二百六十円から三百六十円に増える。対象者は約七十万人と見込まれる。住民税が非課税の人や難病、小児慢性特定疾患の人の負担額は据え置く。

 高所得者は健康保険料がアップする。会社員が加入する健康保険組合などの保険料は、算定の基礎となる「標準報酬月額」の上限を引き上げる。市町村が運営する国民健康保険でも、医療分の保険料の年間上限額が六十九万円から七十三万円に引き上げられ、高所得者の保険料負担を増やせるようになる。適用される年収基準は市町村が決める。

 国民年金の保険料は六百七十円上がり、月一万六千二百六十円になる。一方で支給額は据え置かれ、負担だけが増える形だ。

 このほか雇用保険料率を1・0%から0・8%に引き下げることが盛り込まれた法案は三月中に成立する見通し。保険料は労使折半で、年収四百万円の会社員の場合は、保険料負担が年一万六千円(四千円減)となる。

(図表)前掲、東京新聞。

2016年1月31日日曜日

・<25 plus 9>「高齢期を考えるシンポジウム」

 「高齢期を考えるシンポジウム」が31日、水戸市福祉ボランティア会館で開かれ、市民運動「新・市民会館計画を白紙の戻し、市民の声を反映させる会」(市民の会)の宣伝活動のとりくみの後の午後は、このシンポジウムに参加しました。
 
 シンポジストは水戸市高齢福祉課・土屋氏と医療生協(茨城保健生協)の中山弘子企画部長。とりわけ水戸市高齢福祉課の土屋氏は、「地域包括支援センター」とは何か、ということについて興味深い説明をしました。小生も役所の担当者から直接聞くのは初めてでしたのでたいへん勉強になりました。
 
 

 
 氏は憲法25条の「国民の生存権」と国の「生活保障の義務」を上げたうえ、1950年「社会保障制度に関する勧告」で「地域包括ケアシステム」がつくられた経過を説明した。その時の総理大臣は吉田茂であり、審議会会長は当時社会党左派の理論的指導者だった、いわゆる「労農派」のマルクス経済学者で東大経済学部教授だった大内兵衛(当時法政大総長)でした。
 それよりも小生が気になったのは、勧告で国家が責任をとる以上は「国民もまた、社会連帯の精神に立って、それぞれその能力に応じてこの制度の維持と運用に必要な社会的義務を果たさなければならない」。として「地域包括ケアシステム」について、行政が ❝高齢者を「サービスの受け手」から「サービスの担い手」❞ に位置付けたことです。
 しかし、「勧告」が出された当時の認識は「敗戦の日本は、平和と民主主義とを看板として立ちあがろうとしているけれども、その前提としての国民の生活はそれに適すべくあまりにも窮乏であり、そのため多数の国民にとっては、この看板さえ見え難く、いわんやそれに向かって歩むことなどはとてもできそうではないのである。問題は、いかにして彼らに最低の生活を与えるかである」(50年勧告)。ということであり、財政難の中で、当時先進国の趨勢であった国民が一定の負担をする「社会保険を基本とした社会保障制度」の導入を選択したからにほかなりません。
 それが「自立・互助」、「共助」の現代版「社会保障」では「高齢者が活躍できる場を創造」(水戸市高齢福祉課土屋氏)するとして、健康な要介護前高齢者をまず「介護者」に組織することで、超安上がりの「介護保障」をつくり、社会保障費を削減することにあることは明らかです。
 年金暮らしの高齢者の年収は多くても200万円足らずの低所得者層であり、
その低所得高齢者に「自分が介護される前に介護者になれ」というのは、まことに「下司の極み」としか言いようがありません。「50年勧告」を引き合いに出すなどもってのほかで、「たたかわない高齢者」づくりの極みです。
 しかしながら、行政がこうした「論理的」根拠をもって「地域包括ケアシステム」を推進しているということに驚きをもって受け止めました。 おそらく国をはじめ、上から下までこうなんだろうなという感想をもちました。   
 
 
  一方、もう一人のシンポジスト、医療生協・中山氏は「住み慣れた地域で、健やかな老後を迎えることができる社会」をつくる、明るいまちづくりを提唱、「高齢者のくらしを丸ごと支える視点でのネットワークの構築」するとしたうえで、「制度の充実が不可欠」とし自治体との懇談を推進するなどの課題を提起しました。
 
 医療生協の地域包括ケアがすべてとは言いませんが、自律・自助と共助によって医療介護保険制度を民間保険の導入などで社会保障制度を解体しようとするアベ政治から、住民を守る防波堤となるべき地方自治体が国のいいなりになっている現状では、非営利共同の運動が第三の勢力となって、この分野での活動を住民と一体となって強めることはそれこそ将来の「福祉国家」の道を切り開くことに間違いはなさそうです。
 
 そのとりくみと発展を期待します。

2016年1月20日水曜日

・<25 plus 9>療養病床14万床を廃止へ 新施設へ転換 社会保障費を削減

<25 plus 9>(社会保障費削減)厚労省有識者検討会は全国33万床のうち14万床を廃止する報告書をまとめた。廃止される療養病床は、介護保険が適用される「介護型」約6万1千床と、医療保険適用の「医療型」のうち看護師配置が手薄な約7万6千床となる。
 
 病院の長期療養者を居宅または施設に移して社会保障費を削減しようというもので、内部でも議論にもなったようだが、保険給付を減らし患者負担が増加する施設のようだ。しかし「利用者が負担可能なもの」で保険も↓・・・・自己負担も↓であれば施設運営は困難となってしまう。富裕層の高齢者よりも低所得層の高齢者のほうが長期療養(入院)する率が高い。どちらにせよ「社会保障費削減」が目的であれば介護難民が増加する。
 
(以下、参考資料・引用)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
▷療養病床14万床廃止へ 18年度に新施設へ転換 医師常駐、住まい一体型
(行政・政治) 2016年1月18日 (月) 配信:共同通信社(出所:m3.com) https://www.m3.com/news/general/391703

 医療の必要性が低い高齢者の社会的入院が問題となっている「療養病床」の再編に向け、厚生労働省の有識者検討会は15日、報告書をまとめた。全国の約33万床のうち約14万床を廃止。医師らが常駐して医療と住まいが一体となった2種類の施設を新たに設け、2018年度以降、これらを含めた別の施設への転換を促す内容だ。

 療養病床は家族が自宅で介護できなかったり、施設に入れなかったりする高齢者の長期利用が多く、社会保障費が膨らむ一因とされる。政府は約14万床を17年度末までに廃止する方針を既に決定しており、報告書もこの方針を踏まえた。既存施設の活用や改装などにより、現在入院中の患者が退院を迫られることは避けられる見通し。

 厚労省は、新施設の具体像や患者の費用負担などを社会保障審議会の部会で今後議論し、17年の通常国会に関連法の改正案を提出する方針だ。

 新施設は「医療内包型」と「医療外付型」の二つのタイプ。医療内包型は容体急変のリスクがある人が対象で、特別養護老人ホームのように長期療養できる施設に医師や看護師が24時間常駐。医療外付型は容体が比較的安定している人が対象。病院や診療所と同じ敷地に居住空間を併設する。

 いずれのタイプも住まいとしての機能を強化。プライバシーに配慮し、家族や地域住民と交流できるスペースも設ける。終末期の緩和医療や、みとりにも24時間対応できるようにする。

 検討会では費用負担が重いと低所得者が利用できない恐れがあるとの意見もあり、報告書には「費用面から見て、利用者にとって負担可能なもの」と明記した。
 廃止される療養病床は、介護保険が適用される「介護型」約6万1千床と、医療保険適用の「医療型」のうち看護師配置が手薄な約7万6千床。

 ※療養病床

 慢性の病気で長期療養が必要な患者のためのベッド。全国に介護保険適用の介護型が約6万1千床、医療保険適用の医療型が約27万1千床ある。厚生労働省は2006年の医療制度改革で、社会保障費を抑制するため11年度末までに介護型を全廃し、コストが低い老人保健施設などへの転換を進めるとともに、医療型も看護師の配置を手厚くしない限り廃止の対象になるとしていた。しかし老健への転換はうまく進まず、廃止期限を17年度末までに延長した。

(写真)イメージ