◇激しさを増す自公陣営・アベ政治の反共キャンペーン
~東京新聞「こちら特報部」から
アベ政治は22日、日本共産党を「現在においても破壊防止活動法(破防法)に基づく調査対象である」という答弁書を閣議決定した。東京新聞はこれについて「特報」で勇気ある女性記者が「過熱する反共」という記事を書いています。
この背景には、共産党がすでに候補者を決めていた30の改選1人区のうち9選挙区で候補者を取り下げ、野党統一候補の一本化で合意し、さらに他選挙区でも協議が続くられているなどの「野党共闘」の進展があります。
閣議決定は、あの鈴木貴子衆院議員(北海道比例ブロック、元民主党道連代表)の質問主意書に答えたものでした。氏は4月24日投開票予定の衆院北海道5区補選をめぐって、民主党が共産党と選挙協力することに反対し離党届を出しましたが「除籍」処分となり、自民党入りが噂になっています。その鈴木議員が共産党が「『国民連合政府構想凍結』をはじめ、変わったと主張する共産党への政府の見解を問うため」に質問したといいます。これは鈴木氏の自民党へのすり寄りで、明らかに迫る国政選挙を意識した連携プレイに違いないのです。「自民の歓心を買うための手土産のつもりだろう」と言うのは五野井郁夫・高千穂大准教授(政治学)です(東京新聞3月24日付朝刊)。
さらに自民党は広報ビラで、「理念も政策もバラバラの数合わせ」、「究極の選挙談合」、「民共合作候補」、などとしながら旧ソ連のチェコ侵略まで持ち出して、「私たちが戦うのは"ひ弱な野党"ではない。相手はその裏で確実に勢力を拡大しつつある共産党」であると、ありようもない恐怖感をあおりながら、民主党(民進党)内部と民主支持層を揺さぶって、野党共闘の分断を画策するのです。
中野晃一・上智大教授(政治学)は、「共産党を最初に狙い撃ちしたナチス政権とますます似てきた」、「政治への嫌悪感が強まり、野党が分断されれば議席は維持できるという発想で、何となく怖いという印象操作をしている」とその危険性を指摘しています(前掲、同紙)。
◇反共は不自由のはじまり~「発端に抵抗せよ」と「将来を考慮せよ」~
この東京新聞記事は、あまりにも有名なマルティン・ニーメラー牧師(1892~1984)の言葉の引用とともに、SNSなどで数多く投稿されています。このニーメラー牧師の言葉は、これまでも露骨な反共主義が、いやそうでなくとも、反共思想が頭をもたげてくるたびに、引用されています。
プロテスタント・ルター派のニーメラー牧師の言葉というのは、国内外で大学教授の経験をもつ米国の記者ミルトン・マイヤーの著書「they thought they were free」(「彼らは自由だと思っていた――元ナチ党員10人の思想と行動」(田中浩・金井和子訳、未来社)〉の中に出てきます。それはこの本の中で、教授仲間だった言語学者が語っているのを引用したものです。
というのもM・マイヤーは、外国との文化や人との交流をほとんどもっていなかったドイツの一小都市(戦前の日本も事情は同じだった=翻訳者)クローネンベルグに、戦後すぐ一年以上にわたって滞在し、生活しながらナチズム運動に実際に加わった旧ナチ党員である10人の小市民たちの証言や告白など対話を通じて、その思想や行動の実態を追究するというものでナチス研究の中では珍しく、そのためにたいへん真実味が伝わる著作になっているとも言われています。
M・マイヤー(著書「彼らは自由だと思っていた」より) |
その頃というのは「クローネンベルグ住民たちが、『反ユダヤ主義』と『反社会主義』--日本では反米・英と『反社会主義』--という仮想敵をかかげ、その殲滅がドイツ民族の使命であり、同時にドイツ民族の繁栄を保証するものであるとするナチズムの思想に急速に同化されていった状況」におかれていました(田中浩、同著「あとがき」)。
そこで著者の同僚の言語学者が語ります。「すべてが起こってしまってから、『発端に抵抗せよ』と『終末を考慮せよ』というあの有名な一対の格言を私は何度も考えてきました」。「ニーメラー牧師は、(ご自分についてはあまりにも謙虚に)何千何万という私のような人間を代弁して、こう語られました。ナチ党が共産主義を攻撃したとき、私は自分が多少不安だったが、共産主義者でなかったから何もしなかった。ついでナチ党は、社会主義者を攻撃した。私は前よりも不安だったが、社会主義者でなかったから何もしなかった。ついで学校が、新聞が、ユダヤ人等々が攻撃された。私はずっと不安だったが、まだ何もしなかった。ナチ党はついに教会を攻撃した。私は牧師だったから行動した---しかし、それは遅すぎた、と」。
◇「我々は自由と思っていた」と言う錯誤だけは繰り返してはならない
言語学者の話を続けます。こうした「プロセスの中にいれば、それに気づくことは絶対にできません」。それらの段階、段階、「そのあいだに何百もの小さな段階があります。なかにはそれと感じられないものももあります。そしてどの段階も、つぎの段階でショックを受けないような準備をしているのです。第三段階は第二段階よりそんなに悪くないのです。あなたが第二段階で抵抗しなければ、なぜ第三段階で抵抗しなければならないのでしょうか。こうして、事態は第四段階に進みます。
そしてある日・・・・・それはささいな事件をきっかけに、私の場合は赤児同然の私の息子が『ユダヤ人の豚野郎』といったことでしたが、突然音をたててくずれ、すべてが変貌したことに、目の前で完全に変貌してしまったことに、あなたは気づくのです」。
マイヤーの教訓
訳者の田中浩氏はあとがきでこう綴ります。「『無知は犯罪である』とヘーゲルは述べた。しかし、国民を無知の状態にしておくことはさらに犯罪的である。歴史上の政治はほとんどこのような方法によって大衆を操作してきた。マイヤーが対話した人びとは、ごくふつうの善意の人びとであった。しかし、彼らは、身の周りのことやドイツ以外のことはほとんど知らなかったし、また、それ以上に知らされることもなかった。『彼らは自由だと思っていた』というマイヤーの教訓は今日でもなお生きている。私たちは少なくとも『我々は自由と思っていた』という錯誤を再び繰り返すことだけは避けたいものである」。わが国の政治、今日のアベ政治にはこうしたレベルの国民の意見には耳を傾けることはほとんどありません。IS(テロ)などとともに中国、北朝鮮の脅威などと思想としての「社会主義(共産主義)」を「仮想敵」と設定しながら、国家安全保障会議(日本版NSC)の設置、特定秘密保護法、集団的自衛権行使の容認、歴史認識の変更、安全保障関連法=戦争法などなど歴史に逆行する法律を次々に放ち、嘘八百の国会運営で強行突破してきました。そして、日本共産党を「破壊防止活動法」の対象と確認する閣議決定です。
ネット上では右翼たち(ネトウヨ)とその同調者が、「国家機密法なんかどこの国にもあるよ」、「安倍内閣がファシズムだって、どこが」、「アベがナチスと同じだって?どこが」などが飛び交う始末で場合によっては炎上することすら少なくありません。ヘイトスピーチも野放し状態です。
彼らは自由だと思っている。しかし、「我々は自由と思っていた」という錯誤にだけは陥らないようにしなければなりません。
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