国会での戦争法案の審議が進めば進むほどその本質がどんどん明らかになっていくという中で、法曹界、文化人、学者、自治体、各団体、市民団体などや国会周辺でも連日抗議する人びとが日に日に増え続けています。この法案が憲法に違反する戦争法案である限り、これからも増え続けて行くでしょう。
何故、自民公明など与党だけでの採決強行なのか。NHKはじめ報道各社の世論調査でも「安保法案反対」や「徹底審議」を求める国民が増加するとともに、「内閣支持率」の低下が不支持が支持を上回るまでにその下落ぶりが顕著になってきました。そしてアベ晋三首相自らも「国民に理解されていない」と認めざるを得ないほど(それでなんで強行採決なのかは分かりませんが)、それほどアベ政権は追い詰められています。
NHKニュース 2015/07/13
おそらくアベ宰相らは、秋には次の難問であるTPP問題も控えている。原発の再稼働も、新国立競技場建設問題も出てきてしまった。難問は山積み。このまま行けば内閣支持率は急速に低下し、退陣に追い込まれると焦燥感に駆られ、長期政権の話どころではないと考え、参院で採決できないことも念頭にいれた延長国会と衆院再可決で決められる60日間ルールの効力のある時期に採決を強行することが必要だったのでしょう。
「時期が来れば採決する」というのは、審議が長引けば長引くほどボロが出るし、それは世論に直接影響するのであまりやりたくない、その時期が60日ルールのギリギリでもない少し余裕のある15日特別委員会採決強行のシナリオだったに違いないのです。
「まもなく採決へ」15日の衆院特別委のTV中継(NHK) |
衆院本会議16日、「安保法案」、野党5党がいない中、自公ら与党の多数で可決(NHKTV) |
そして、戦後最悪である戦争法案の決定を急ぐその背景に、4月の訪米で、冷戦時代以降、覇権国家としての相対的な力が弱まった同盟国米国との公約があったからで、先送りなどしたら国内外でアベ宰相の求心力がなくなるからです。
軍事力を減らさざるを得なくなった米国にとってみれば日本の自衛隊は喉から手が出るほど欲しい。
財界に後押しされたアベ政権にとっては、過剰生産物のはけ口としてグローバル化した資本主義経済システム(「世界中の邦人を」)守るには核を含む軍事力の増強(同盟を含む)が必要だし、景気を回復しさらに経済成長させるには、どうしても輸出拡大は不可欠、だが実際には基幹産業である自動車輸出などは減少している、一般論ばかりではなく、原発も武器の輸出さえもいとわない、そういう基幹産業の「成長戦略」が必要なんだとでも言うのでしょう。
こうした民意を無視して黒を白と言うまるで傲慢な態度のアベ宰相の背後霊は、祖父として自負し、尊敬する岸信介元首相です。
アベ宰相がいつも口にし、・・・・・・くしくもこの日(15日)は、首相の尊敬する祖父、岸信介元首相が1960年、日米安保条約改定を巡る国会の混乱から退陣した日だ。首相は特別委で「あの(安保改定の)時も国民の理解はなかなか進まなかった。しかし、その後の実績をみて多くの国民から理解や支持をいただいた」。・・・・・首相に近い参院議員の一人は「消費税や年金と違い、国民生活にすぐに直接の影響がない。法案が成立すれば国民は忘れる」と言い切る(2015/07/16朝日新聞web「成立すれば国民は忘れる 強行採決の背景は」)。
彼らの最大の誤算はこれだと思います。
(以下、参考資料引用)
▽安保法案、衆院通過 今国会での成立が確実に
日本経済新聞 2015年7月16日(木)http://www.nikkei.com/article/DGXLASDE16H0C_W5A710C1MM0000/?dg=1
集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法案は16日午後の衆院本会議で自民、公明、次世代各党の賛成多数で可決され、衆院を通過した。審議継続を求める民主、維新、共産など野党5党は採決を退席した。安倍政権が最重要と位置づける同法案は9月27日までの今国会中の成立の公算が大きくなった。
野党議員が退席する中、安保法案を可決した衆院本会議(16日午後)
安保法案は自衛隊法や武力攻撃事態法など改正10法案を束ねた「平和安全法制整備法案」と、国際紛争に対処する他国軍を後方支援するため、自衛隊の海外派遣を随時可能にする新法「国際平和支援法案」の2本立てだ。
安倍晋三首相は16日昼の自民党代議士会で「これからも国民の理解が深まるよう努力を重ねていく」と述べ、衆院通過後の参院でも慎重な審議に努めるとした。
本会議での採決に先立つ討論では、自民、公明両党が法案への賛成を表明し、民主、維新、共産など野党は反対を主張した。
民主党の岡田克也代表は反対討論で「強行採決は戦後民主主義の大きな汚点になる。集団的自衛権の行使を認めるという憲法改正に匹敵するような憲法解釈の変更だ」と指摘した。野党は採決を前に退席し、採決に抗議する意思を示した。
安全保障関連法案が衆院を通過し拍手する安倍首相(16日午後)
5月26日に始まった審議では、集団的自衛権の行使の是非や憲法との整合性、他国軍の後方支援をどこまで認めるかなどを巡り、与野党が激しい論争を続けた。与党は一時、維新との間で法案修正も探ったが実現しなかった。7月15日には衆院平和安全法制特別委員会の審議時間は与党の目安を大きく上回る116時間に達したため、浜田靖一委員長(自民党)が質疑打ち切りを宣言、与党単独で採決に踏み切った。
民主党の高木義明国会対策委員長は16日午前の記者会見で「(衆院では)他の法案はしばらく審議する状況や環境ではない」と反発した。
与党は法案が参院に送付された後、60日たっても法案を議決しない場合、否決したとみなして衆院の3分の2以上の賛成で再可決できる「60日ルール」の活用も視野に入れている。安保法案が16日に衆院を通過したことで、9月14日から同ルールを適用できる。
菅義偉官房長官は16日午前の記者会見で、参院での審議について「引き続き政府として懇切丁寧な説明をしていく」と訴えた。ただ採決を強行したとの印象がぬぐえなければ、内閣支持率の低下などにつながりかねず、今後の政権運営に影響を与える可能性もある。
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